研究会について

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代表あいさつ

 
 

 新しく代表に就きました實平雅夫です。
 本研究会の前身は1992年3月に旧大阪外国語大学で発足しました「日本語教育研究会」、そして2002年に発足しました「日本語・日本文化研修留学生教育研究会」であり、現在の研究会は2005年9月にあらたに「日本語日本文化教育研究会」の名称で発足しました。いずれの研究会の名称にも「教育」の二文字が入っています通り、常に教育対象者を意識しながら、日本語研究、日本語教育、日本文化研究に取り組み、それぞれの分野の研究のさらなる発展はもとより、これらの学際的な研究のさらなる振興のための活動を行っています。
 
 したがいまして、本研究会に参加すれば、専門分野以外の研究発表も聴くことができます。ともすれば研究を重ねていきますと、その範囲が狭くなりがちです。対象となる研究分野を広くすることによって、聞き知った他分野の研究からも知見を得たり、将来の教育研究に役立てたり、研究者としての視野が広がることでしょう。発表者は、専門分野が異なる参加者にも分かりやすい発表が求められますし、国際的に多様な言語文化を持つ参加者を意識した発表も心がけなければなりません。
 
 このように、本研究会は、国際的で学際的な研究を、参加者の視点からも考える発表を通して伝え合う「教育」の場でもあります。その場をさらに充実したものにするために、近年は口頭発表に加えてポスター発表の場を設けたり、研究会誌『間谷論集』に掲載された論文を審査対象に研究会賞を創設したりと研究会活動の幅を広げています。
 
 最後に、このような研究会への皆様の参加をお持ちしています。研究発表会で発表すれば、必ずや教育的配慮のある有益なコメントをもらえるいい機会になることでしょう。
 
 それでは、研究会でお会いしましょう。
 

役員

代表

 實平雅夫

運営委員

 伊藤翼斗
 今西利之
 岩井茂樹
 櫻井千穂
 柴田芳成
 下村朱有美
 須藤潤
 門脇薫 
 永原潤子
 野畑理佳
 日比伊奈穂
 大和祐子
 VAAGE Goran

監事

 阪上彩子
 千々岩宏晃
 

会則

日本語日本文化教育研究会 会則

第1条 本会は、「日本語日本文化教育研究会」と称する。
第2条 本会は、事務局を次の所在地に置く。     
     大阪府箕面市船場東3-5-10
      大阪大学日本語日本文化教育センター内
第3条 本会は、日本語日本文化教育の研究及び発展と会員相互の親睦を目的
    とする。
第4条 本会は、前条の目的を達成するために、次の事業を行う。
(1)研究会の開催
(2)紀要の発行
(3)その他、本会の目的を達成するために必要な事業
第5条 本会の趣旨に賛同し、所定の会費を納めた者を会員とする。
    会員は、所定の会費を3年間滞納した場合に会員の資格を失うものと
    する。
    会費は、細則によって別に定める。
第6条 会員は、本会主催の事業に参加し、紀要の配布を受け、同誌に研究論
    文などを投稿することができる。
第7条 総会は毎年1回開催する。ただし、必要と認められた場合には、臨時
    総会を開くことがある。
第8条 本会に、次の役員を置く。
     代表 1名
      代表は総会の召集を行い、会の運営に責任をもつ。
     運営委員 若干名
      運営委員は委員会を組織し、会務を処理する。
     監事 若干名
      監事は会計監査を行う。
     代表は会員の中から運営委員会によって推薦され、総会の承認を得
     て決定される。
     運営委員及び監事は会員の中から運営委員会又は5名以上の会員に
     よって推薦され、総会の承認を得て決定される。
     役員の任期は2年とし、再選を妨げない。
第9条 本会に、編集委員会を置く。
    編集委員会は運営委員会が選出した委員によって構成され、紀要の編
    集業務を担当する。
第10条 本会の事務遂行に要する費用は、会費その他による。
第11条 本会の会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終わ
     る。
第12条 本会則の変更は、総会の議決を経て行う。
 
附則
本改正会則は、2022年4月1日より施行する。
 

会費に関する細則

 
第1条 会則の第5条に基づき、本会の会費(年額)を次のように定める。
    一般会員 年額5,000円
    学生会員 年額2,000円
    賛助会員 年額1口 10,000円以上
第2条 納入された会費については、理由の如何を問わず、返却しない。
    年度途中の入会者は、会費を全額納入する。
    海外在住となった会員は、その期間の会費納入を免除する。
第3条 この細則は、運営委員会の同意が得られるならば、改正することができる。
 
附則
本細則は、2006年4月1日より施行する。
本細則は、2022年4月1日より施行する。
 

会費納入のお願い


当研究会は会員各位の会費により運営されております。会費の納入にご協力くださいますよう、よろしくお願いします。
会費は研究発表会の受付での納入、または下記口座への振込での納入が可能です。
 
銀行名:ゆうちょ銀行
預金種目:当座
店名:〇九九 店(ゼロキユウキユウ店)
口座番号:0203493
年間会費:一般会費5000円、学生会費2000円
 

日本語日本文化教育研究会賞規定

 
(目的・名称)
第1条 日本語日本文化教育研究会における研究の一層の向上を目的として、若手会員の傑出した研究論文を顕彰することを主眼とした「日本語日本文化教育研究会賞」(以下「論文賞」という)を設ける。
 
(授賞対象)
第2条 論文賞は、当該年に刊行された研究会紀要『間谷論集』の「研究論文」のうち、執筆者(共著の場合は執筆者全員)が次のイ・ロいずれかにあてはまる会員であるもので、特に優れていると認められるものに授与する。
イ 学部生・大学院生
ロ 修士または課程博士の学位取得後5年以内の者
 2 論文賞は、毎年1論文に対して授与する。選考の結果賞にふさわしい論文がないと判断された場合は、該当論文なしとする。
 3 共著の場合を含め、授賞は1回のみとする。
 
(論文賞選考委員会)
第3条 論文賞の選考のために「日本語日本文化教育研究会賞選考委員会」(以下「選考委員会」という)を設ける。
 2 選考委員会は、5名の選考委員からなり、うち少なくとも1名は紀要編集委員とする。
 3 選考委員は、年ごとに研究会代表が紀要編集委員と協議のうえ、運営委員会の承認を経て委嘱する。
 
(選考過程)
第4条 選考委員会は授賞候補論文を選考し、書面(授賞理由および資格の有無を記載したもの)で運営委員会に推薦する。
 2 選考委員会は、当該論文の査読委員等、外部の意見を求めてよい。
 
(賞の決定)
第5条 運営委員会は選考委員会からの推薦に基づき授賞論文を決定する。
 
(授賞)
第6条 授賞対象者には,総会において表彰状を授与する。
 
附則
本規程は、2019年3月刊行予定の『間谷論集』第13号より適用する。
 
 

2023年度 受賞論文

該当論文なし

選考の結果、本年度の受賞作品はなしと決定した。
 

2022年度 受賞論文

彭雨新
「大東亜文学賞受賞作『貝殻』の再検討―1940年代の「華北文学」をめぐる日本人文学者の認識と論争―」
(『間谷論集』第16号掲載)

 

選考評

 本論文は、これまで詳細が不明であった1940年代の華北文学をめぐる日本人文学者の認識・論争に光を当て、日中戦争期の華北文学の、文学史上の位置づけを再検討している。
 稿者は、これまでの議論が中国語雑誌に見られる中国側の批判が主であったことを指摘した上で、稿者自身が中国での調査で新たに発見した日本占領期の北京で発行された日本語新聞『東亜新報』などに掲載されている文章を一次資料とし、中国人作家袁犀の長編小説『貝殻』の受賞をめぐる日本人文学者の言説への考察を通して、日本側の認識・論争に光を当てている。
 本論文の冒頭に着目すべき人物等について提示した上で、一次資料を丁寧に読み解くかたちで論が進んでおり、展開が追いやすい。当時の日本占領期の華北文学に対する日本の内地文壇の無知かつ無関心、文化統治への利用という側面のみならず、現地日本人文学青年の純粋な想いを読み解いている点が、政治的統制のもとでのその制約をも超えた真の日中文学交流のあり方を考えさせる興味深い論考となっている。
 本研究はこのように、従来不明であったことを、自ら探査し、新たに発見した資料によって初めて明らかにできたという点で、新規性は非常に高いと言える。同時に、華北文学に関する研究に一石を投じることを意図した論考であり、今後、本論文の妥当性への評価を含めた応用や発展が十分期待される。
 以上の所見により、本選考委員会は、全員一致で、本論文が日本語日本文化教育研究会賞を授賞するに値すると認めるものである。
 


2021年度 受賞論文

平野啓太
「動詞連用形に接続する接尾辞における句の包摂と品詞性・意味の関係について」
(『間谷論集』第15号掲載)

 

選考評

本論文は、句の包摂を起こす接尾辞について、その意味と品詞性との間に相関が認められることを論じるものである。
 稿者は先行研究を概観し、句の包摂が起きる接尾辞は従来「名詞(的なもの)」と扱われてきたことを指摘する。それに対して本稿は、村木(2012)の第三形容詞という分類を導入した上で、その第三形容詞内の名詞性の強弱と項の表れ方に相関がある事、句の包摂は名詞性の弱い接尾辞において生じやすい事を明らかにする。稿者はさらに接尾辞の意味と品詞性について考察を進め、句の包摂を起こす接尾辞はある特定の意味の範囲にまとめられることを示す。それらの意味は名詞性の強さと相関しつつ、連続的に変化するものであることを見出している。
先行研究の知見を丁寧にレビューし、その課題を洗い出した上でリサーチクエスチョンが設定されており、これまで未整理の領域を手堅く整理することに成功している点で、論文としての質の高さが評価できる。また、句の包摂を起こす接尾辞に関して、意味と品詞性との間の相関という観点から見つめ直していることは新規性が認められる。本研究の知見は、言語学領域において、「第三形容詞」という概念の精緻化や、品詞性と意味の関係についての理論化への発展が期待される。さらに、日本語教育への応用も可能なものであると判断した。
 以上より、本選考委員会は、全員一致で、本論文が日本語日本文化教育研究会賞を授賞するに値すると認めるものである。
 


2020年度 受賞論文

ヘッティヤーハンディ ワッサラー ディシルワ
「「させていただく」表現の使用における広がり―その構造的側面―」
(『間谷論集』第14号掲載)

 

選考評

 本論文は、話し手・聞き手によって許容範囲に大きな幅をもつ「させていただく」という表現に関して、その用法の広がりと背景を言語学的観点、および文構造から考察するものである。
 稿者はまず、文化庁「敬語の指針」に基づいて「させていただく」が「敬語の形式」であることを押さえた上で、先行研究の整理を試みる。いずれの先行研究でも、話し手と相手との関係を軸にした意味・用法の分類が行われるが、そこでは「許可」と「恩恵」の要素を備えた基本的用法と、とくに「許可」が自明ではない拡張的用法のあることが指摘されていることを示す。さらに、稿者自身の収集データも活用し、「させていただく」の意味用法が表現形式とも相関関係のあることを説き、文構造の分析、および「恩恵」「丁寧さ」「使役」などの観点から、「させてもらう」のような他の表現との差異、待遇性に関して、基本的用法が成立する背景を考察する。
 また、拡張的用法として「謙譲語+させていただく」を取り上げる。二重敬語であるために不適切な形式と意見されることが多いが、稿者は形式的には二重敬語ではなく、敬語連結であるとの立場をとりつつも、使役形の節がテ形で「いただく」という節に接続する埋め込み構造をもつ文では、謙譲語の使用の点からやはり不適切であると認める。一方で、この用法を許容する話者が多い背景には、「させて」の動作主(=被使役者)が文の表層には現れにくく、使役の意味が希薄化、あるいは形骸化している現象があり、非過去断定形(させていただきます)では特に、使役者の許可を得るよりも話し手が欲する行為を行う点にこそ重点が置かれていることを指摘する。
 「させていただく」表現についての先行研究では、文構造の分析を採用することはほとんどなく、稿者の方法はそこに新たな視角を与えるものであり、拡張的使用が母語話者に許容されてきた理由を解明しようとしたという点で意欲的な論考である。さらに、日本語教育の分野への応用の可能性を感じさせるものともなっている。
 以上により、日本語日本文化教育研究会賞を授与するに値すると認められる。
 
 


2019年度 受賞論文

ベレジコワ タチナア
「近代日本における「雛祭り」の再生––国民行事への道程––」
(『間谷論集』第13号掲載)

 

選考評 

 本論文は、近代を迎えた日本で、「雛祭り」が個人的・家庭的な行事から国民行事へと変化していく過程を考証したものである。「雛祭り」を対象とする研究として、従来のように人形を中心に据えた、その姿形の歴史的変遷や価値、地域性をたどるといった美術史的な枠組みに収まった考察ではなく、近代日本の形成という社会との関わりを課題に据えた、新しい視角からの意欲的な取り組みである。論を進めるにあたって、当時の新聞記事や訪日外国人による報告書など、広く日本語・外国語の文献資料にあたって調査しており、実証性を備えた説得力のある考察となっている。
 江戸時代までの「雛祭り」は大人が中心となる傾向があったのに対し、明治以後には外国の教育学などの影響もあり、子どもを中心とした行事へと発展したと述べる。そこには、外国における人形を通じた教育のあり方、日本への導入といった教育史的背景のあったことが検討されており、さらには、女子教育における良妻賢母を養成する効用も期待されていたことを指摘する。また、当時の教育家の言葉を引いて、雛人形の形式に、一夫一婦制・道徳倫理教育的意義・天皇制への尊崇の念も提唱されていたことを提示する。ここに示唆された、教育の変化が文化の変容に影響を与えるという視角は、日本文化における他の事象についても応用できる可能性をもつものと思われる。
 ただ一点、先行研究の紹介要約にケアレスミスのあることが惜しまれるが、前後の文脈から理解できていることは認められ、本論文の課題、論旨の展開に齟齬を来すものではない。
 以上の通り、本論文は、現在一般には伝統行事の一つとみなされている「雛祭り」について再考し、近代において与えられていた役割を明らかにしたものである。ここに示された考察は、行事と教育のあり方、また社会と文化の関係を検討したものとして特に優れた成果を挙げていることから、日本語日本文化教育研究会賞を授与するに値すると認められるものである。